現代アートの巨匠、待望の大規模個展

ドイツが生んだ現代アートの巨匠、ゲルハルト・リヒター(1932-)。
私たちはどのように世界を捉えているのかー?
その条件を問い直すため、リヒターは、具象絵画、抽象絵画、写真(やその上に描いたもの)、ガラスや鏡を用いた作品、映像作品など、実に多岐にわたる制作活動を行ってきました。
本展は、1960年代に本格的に活動を開始して以来、世界のアートシーンの最前線を走り続け、その地位を揺るぎないものにしているリヒターの、日本での待望の大規模個展です。リヒターが90歳を迎える2022年、作家が大切に手元に残してきた作品群を中心に、60年にわたる画業を紹介します。

幅2メートル、高さ2.6メートルの作品4点で構成される巨大な抽象画《ビルケナウ》。展覧会出品作の中でも最大級の絵画作品の1つであり、作家自身にとって重要な位置を占める作品です。
この作品の下地になったのは、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で囚人が隠し撮りしたとされる4点の写真。ガス室で殺された仲間の死体を焼却する作業に従事していたゾンダーコマンド(特殊部隊)の一人が、密かに収容所内部の様子を撮影し、外部へ持ち出したものです。リヒターはこの写真のイメージをキャンバスに描き移したのち、絵の具で塗りつぶして、この抽象絵画を作り上げました。
リヒターの心をずっと捉え続けながら、直接的にはなかなか取り組むことのできなかった「ホロコースト」という積年の関心事を主題に、2014年、ついにリヒターはこの大作を完成させました。この近年の重要作品と目されている作品が、これらとしばしば組み合わせて展示される鏡、絵画と同寸法の写真作品とともに、この度日本で初めて公開されます。

  • ビルケナウ (937-1) の作品画像
  • ビルケナウ (937-2) の作品画像
  • ビルケナウ (937-3) の作品画像
  • ビルケナウ (937-4) の作品画像

《ビルケナウ》2014年 © Gerhard Richter 2022 (07062022)

1932年に東部ドイツ、ドレスデンに生まれる。ベルリンの壁が作られる直前の1961年に西ドイツへ移住し、デュッセルドルフ芸術アカデミーで学ぶ。コンラート・フィッシャーやジグマー・ポルケと友情を築き、「資本主義リアリズム」と呼ばれる運動の中で独自の表現を発表し、その名が知られるようになる。その後、イメージの成立条件を問い直す多岐にわたる作品制作を通じて、ドイツ国内のみならず、世界で評価されるようになった。これまでポンピドゥー・センター(パリ、1977年)、テート・ギャラリー(ロンドン、1991年)、ニューヨーク近代美術館(2002年)、テート・モダン(ロンドン、2011年)、メトロポリタン美術館(2020年)など世界の名だたる美術館で個展を開催。現代で最も重要な画家としてその地位を不動のものとする。